小説家・横田創 連続小説配布配信企画「わたしを見つけて」最新作公開!
みなさま、おはようございます。
東京は春のような暖かい日がありましたが、いかがお過ごしでしょうか?
ここ数年、花粉症デビューしてしまったみたいで、僕はぼーっとしてしまいがちです。
ついつい後回しにしてしまうのですが、どうやら病院に行くといい薬があるらしいので、今年は行ってみようと思います。
それでは、週報お送りします。
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2022年1月から無料で配布・配信している小説家・横田創 連続小説配布配信企画「わたしを見つけて」の最新作が公開されました。
タイトルは「空港にて」です。
この企画は、1作品ごとに楽しんでいただけます。そして、読み重ねていくことで、より楽しんでいただける作品になっています。
過去に配信した作品は全て、下記のサイトよりお読みいただけます。
紙で読むことにも力を入れていて、いくつかの書店では冊子を配布しておりますし、公式サイトの「落とすもの」から、自宅で簡易製本できるPDFもダウンロードいただけます。A4用紙に裏表印刷していただくと、簡単にミニ冊子ができます。ぜひ、お試しください。
<「空港にて」冒頭少し引用>
1
フラスカーティ[Frascatie]。彼女の名前をわたしは忘れない。彼女のようにわたしも生きると誓ったから。いつかわたしもこの町ではない町をわたしの町にする。彼女と最後に会った日の晩。わたしは誓った。わたしも彼女と同じことがしたかった。
なのにわたしはまだこの町にいる。太ったおばさんになってもまだ父と暮らしている。月に1度ローマに買い出しに行く以外どこにも行かない人生だった。
フラスカーティ[Frascati]には昔からパン屋が3軒ある。1軒は天然酵母でつくるパンだけを売るお店。もう1軒はパリで修行をしてきた3代目の店主の味を守るお店。甘くないクロワッサンはわざわざローマから買いに来るひとがいるくらいいまも人気。
そしてもう1軒がわたしが働くお店「イタロ」。働くというとおまえは手伝ってるだけだろうと言わんばかりの目をして父に睨まれる。グラム売りの四角いピザもドーナッツもトルティーヤも。緑のオリーブのフォカッチャも。アップルパイまで売っている。父[Italo]が会社を辞めて始めたこの店でフラスカーティは働いていた。
年齢はたぶんはたちを越えたか越えてないかくらい。背が低く、細かった。どんなに食べても太らなそうに見えた。もしかしたらアジアかロシア。ユダヤの民をルーツに持つひとかもしれなかった。 地図の中に自分と同じ名前の町を見つけた。それが彼女がこの町で暮らし始めた理由だった。それまでどこで誰と暮らしていたのか。誰も聞かなかった。聞いても彼女が答えないことはわかっていた。
わたしはまだほんの10歳の子供だった。身のこなしが軽く、働き者の彼女のことがわたしは大好きだった。
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最新のイベント情報
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【アーカイブ】3/6まで
「第2回 随筆かいぼう教室」
ゲスト:オルタナ旧市街(作家)、
出演:わかしょ文庫(作家)、宮崎智之(フリーライター)
http://ptix.at/Fu0YRl
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以上です!!
今週もみなさんが、善き本と出会えますように。
双子のライオン堂
http://liondo.jp
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